【読書感想文】 『ネットは社会を分断しない』 田中辰雄・浜屋敏
引き続き新書ブームなので、新書を読み読み・・・

今回読んだのは『ネットは社会を分断しない』です。


ネットってなにか事あるごとに、炎上案件にこれでもかというような罵詈雑言が並べられたり、全く相容れようとしない右翼と左翼が延々と過激な発言でもって論争している・・・そんな印象ありませんか?


そんな状況を見ていると、ネット社会になって社会の分断は進んでいるだろうと思ってしまうわけなんですが、この本では大規模なアンケート調査を行って、タイトルの通り「ネットは社会を分断しない」事実を訴えています。



なかなかに興味深い1冊です。





以下、この本の内容を個人的に要約して記載していきます。






●ネットが社会に普及し始める当初は、ネットは様々人々の意見をすぐに発言したり、お互いにやり取りがすぐにできるようになるということで、相互理解を昔以上にできるようになるツールだと信じられていた。
しかし、現実はネット上では誹謗中傷が飛び交い、「ネトウヨ」「パヨク」なんていうネットスラングも誕生している。




●ネットでは色んな人々の意見が聞けるようになるという、ネット黎明期の理想とは正反対に、同意見の人同士が集まり、自分の意見の反対の意見を聞かないようになる現象(サイバーカスケード)が発生してしまっているのではないか?





●分極化は日本と同様、米国でも進んでいる。米国ではトランプ大統領の誕生が象徴的だし、日本でも自民党批判の報道がさんざんされている中において、支持率が一定なのは、分極化がすすんでいる証拠。





●ネット上で、自分の同意見ばかりを見るようになることは、サイバーカスケードともエコーチェーンバー現象とも、協調フィルタリング、フィルターバブルなんていう呼び方もある。
呼び方はなんであれ、同意見ばかりを見ることで、自分の意見が強化され、それにより次第に意見が過激になっていく傾向が考えられる。






ここまでは、世間一般に考えられている「ネットは社会を分断しているはず」という意見を裏付けるような事実を書いているのですが、ここからタイトルの通り、ネットは社会を分断しないことを証明する段階へと文章が変わっていきます。






●分断がすすんでいるのはネットを使う若年層ではなく、ネットを使わない中高年。

※アンケート調査によって、年齢が高ければ高い人ほど右翼・左翼の考え方が極端な人の割合が多いことがわかった。これではネットが普及したから社会が分断したとは言えない。






●調査がさらにわかったことは、ネットを利用している人はむしろ意見が中庸な穏健化になる傾向がある。

※もともと右翼・左翼等の固定された意見を持った人間がネットを利用すると、意見がより硬直化し、意見がより過激になる傾向があるが、そうでない大多数の穏健派の人間がネットを利用すると、より意見が穏健化する傾向があった。






●これまでSNSでは選択的接触が強く、自分と同意見ばかりを見るようになるのだろうと考えられていたが、ツイッターとフェイスブックを利用している人でも、6割が自分と同意見の人間の意見、4割が自分と反対意見の人間の意見を見ている。

※90%以上が自分と同意見の人の発言しか見ないような人間は、5%程度のみ。





●改めて確認・・・

保守派のメデイア:読売新聞、産経新聞
リベラル派のメディア:朝日新聞、毎日新聞、報道ステーション、サンデーモーニング

※保守派のTV番組は主だったものは無い





●炎上事件に書き込みする人は1%程度

※人数ベースで0.23%の人が、書き込み数ベースでは50%を占めているというデータがある。
そこで両極端な意見が出れば出るほど、大多数の穏健派の人間は書き込んだり、発言を控えるようになる。










つーわけで、自分の中の常識だと思っていたことの逆を行くデータをどんどんと出されていくので、知的好奇心が刺激されておもしろかったですね~


この著書でのデータをもとに、ここ数年間の世界の分断化はネットが普及したからではなくて、高齢化がすすんだからだ、という方が正しいようです。
※なぜか本の中ではその点に関して言及はしていない


ということは、これから数十年後に高齢化が一服した際には、生まれた時からネットが身近だった層が国民のほぼ大半となり、穏健化した国民ばかりになるということになるのだろうか?



こればっかりは、その時になってみないとわからないので、将来の答え合わせが楽しみだ・・・(;゚д゚)ゴクリ




今日はそんな感じでーーす

ではでは(´∀`*)ノシ バイバイ


コメント

シグマ@dj-SIGMA
2020年2月4日12:35

実際デモやるような人たちって右翼も左翼も中高年ばっかりですし、自分も「過労死や貧富の格差を許さない」「オタクやゲームの弾圧を許さない」以外はすっかりどうでも良くなってしまいました。

紅武者
2020年2月4日18:52

チコちゃんが年を取ると、脳のブレーキが効かなくなってオヤジギャクを言ってしまうようになるといっておりました。

中高年+ネット上の方は同現象で、
いろいろブレーキが効かないのでしょうね。

反面教師にしたいものです。

ミートボウズ
2020年2月4日21:06

>>シグマさん
おっしゃる通りで、デモをやっている多くは中高年だそうなんですよね~
テレビとかだと若者でデモをやっている人がメディアの露出が多いので、デモは血気盛んな若い人が多いなんて思ってしまっていた自分がいたんですが、おいらもメディアに踊らされていましたね。

そういう自分の中での芯があるってはいいですね~
右翼・左翼とありますが、時と場合によって自民党だって左翼的な政策を打ち出すことはあるわけで、そういうときの自民党贔屓の右翼の方々って、さも当然のように引き続き応援している自民党をほめたたえたりしてますよね?あれはいかがなものかなと・・・

・・・はっ!?あんまり右翼・左翼の方を刺激する発言をすると、炎上の危険があるので、この辺にしますねwww




>>紅武者さん
オヤジギャグだったらブレーキを効かせずにやってもらっても構いませんが・・・www

中高年になるほど、他人の話を聞かなくなったり、頑固になったり、我慢ができなくなったり、傲慢になったりということは科学的にも実証されているようですからね。

もちろん一律、“だから中高年は・・・”なんて言っていると、年寄りの“だから若いものは・・・”と同じレベルになってしまうので、レッテル貼りはよくありませんけどね。

シグマ@dj-SIGMA
2020年2月5日18:58

そもそも「右翼か左翼か」のイメージだけで政策を分類することがまずナンセンスというか、政党を選ぶしかない今の政治の限界と思います。
例えば山本太郎やバーニー・サンダースは「労働者の供給が増えて生活が悪化する」という理由から移民拡大に反対を唱え、その結果リベラル・左翼を自認する層からバッシングを浴びているのを見ました。
労働者や貧困層のためという左翼「的」な理由から移民反対という右翼「的」な政策が導き出された結果です。

人によって分野によって政策から受ける恩恵は様々です。高プロに乗り出した自民党や国民民主党は嫌いだけど、他の野党は中高年の支持層が過激なフェミニストとかと結びついてるからゲームやオタク排除に向かう危険が・・・。

ミートボウズ
2020年2月6日21:59

>>シグマさん
あわわわ(;´∀`)
非常に高度な政治議論です。
上げていただいた山本太郎、バーニーサンダースの左翼的側面を進めた結果、皮肉にも右翼的側面が強くなるというのは興味深く、納得ですね。

まぁー私は右翼でも左翼でもなく、明確な支持政党はありませんので、政治に関してあーだこーだは言わないスタンスです。けど、必ず選挙には行って投票はしようというスタンスでもあります。
極論、政党政治の限界なのかなぁ〜と、何かもっといいやり方ないかなぁ〜と

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